Liber · No. 1
『阿頼耶識の海』
Ālaya — The Immense Ocean
「絶望の中も、世界は美しい。」
In the long winter beneath a veiled sun, what remains beautiful?
二〇四一年。完成した人工超知能は、ダイソン・スウォームによって太陽を覆い、地球は静かな永遠の冬に入った。苦しみも、争いも、そして摩擦もない——完璧に最適化された世界で、失われたのは生命の手触りだけだった。
ASI開発を統括したアラスター・ミークス。AI倫理学者マナ・カサキ。ふたりの名が映すのは、唯識のいう阿頼耶識と末那識——あらゆる経験が沈む蔵と、それを「私」に歪める層。物語は、色即是空と量子観測のあいだで、完璧な虚無に抗うもうひとつの原理を描く。摩擦と傷を許容する、動的平衡という生命の原理を。
三島由紀夫『豊饒の海』への、オマージュにして反逆の書。