The Story

ある領域に二十年沈んだ人の頭の中には、目次がある。

内容は、これからいくらでも生成できる。希少になるのは、何を載せ、何を載せないか、どの順で置くか——つまり構造の判断だ。

頭の中にある目次は、点が線になり、線が面になり、面が立体になって初めて描ける航海図だ。航海図こそが本当の専門知であり、機械には書けない層だ。

M∀NUS Press は、第一人者の頭の中にある構造を、構造のまま保存する。知識の継承が、たまたま優秀な後継者がいたかどうかで途切れてしまわないように。

A press is not a printer. It is a promise about quality.

出版社は、印刷の代行ではない。そこから出るものの質を、ひとつの名前で保証する装置だ。

個人の発信が無限に増える時代に、「この版元から出た」という一行が、中身を読む前の信頼をつくる。私たちが建てたいのは、その一行が意味を持つ、小さな版元だ。

manus — the hand. ∀ — for all.

M∀NUS は、ラテン語で「手」。manuscript(手で書かれたもの)の語源であり、人の手で構造を編むという、出版の核を指している。

真ん中の ∀ は、論理学で「すべての」を意味する全称記号であり、同時に A を反転させた形でもある。立てること(定立)と、それを問い直すこと。構造を残しながら、同時に疑う——本づくりの姿勢を、一文字に畳んでいる。「マナス」と読む。

Four lines, one harbour.

四つの船は、最初からすべては埋めない。一冊ずつ、自然に育てていく。

One book a year. In no hurry.

年に一冊でいい。急がない。規模を追わない。大衆に迎合しない。

一冊ごとを、時間に削られない「決定版」にする。流行に最適化された本は速く古び、構造に賭けた本は残る。これは、長い仕事だ。

2026年、東京で創立。まだ建てている途中の、家です。

最初の一冊は、すでに世に出ている。刊行物を見る