The Story
It began with a single book that had nowhere to go.
はじまりは、行き場のない一冊の本だった。
A book, looking for a door.
ある実務の知識を、長い時間をかけて一冊にまとめた。どこから世に出すかを考えたとき、権利の所在やコンプライアンスの確認で話が止まり、結局は自分で電子出版の仕組みに載せた。本は世に出た。けれど、箱がなかった。
箱——出版社という器がないと、本は「個人が出したもの」のままになる。書評の対象になりにくく、図書館の書誌にも残りにくい。ならば、自分で作ればいい。昔の書き手が、同人のために自分たちで版元を起こしたように。
A press is not a printer. It is a promise about quality.
出版社は、印刷の代行ではない。そこから出るものの質を、ひとつの名前で保証する装置だ。
個人の発信が無限に増える時代に、「この版元から出た」という一行が、中身を読む前の信頼をつくる。私たちが建てたいのは、その一行が意味を持つ、小さな版元だ。
When anyone can generate content, structure becomes the scarce thing.
内容は、これからいくらでも生成できる。希少になるのは、何を載せ、何を載せないか、どの順で置くか——つまり構造の判断だ。
ある領域に二十年沈んだ人の頭の中には、目次がある。点が線になり、線が面になり、面が立体になって初めて描ける航海図。その航海図こそが本当の専門知であり、機械には書けない層だ。
M∀NUS Press は、第一人者の頭の中にある構造を、構造のまま保存する。知識の継承が、たまたま優秀な後継者がいたかどうかで途切れてしまわないように。
manus — the hand. ∀ — for all.
M∀NUS は、ラテン語で「手」。manuscript(手で書かれたもの)の語源であり、人の手で構造を編むという、出版の核を指している。
真ん中の ∀ は、論理学で「すべての」を意味する全称記号であり、同時に A を反転させた形でもある。立てること(定立)と、それを問い直すこと。構造を残しながら、同時に疑う——本づくりの姿勢を、一文字に畳んでいる。「マナス」と読む。
Four lines, one harbour.
- Codex専門の決定版。実務家が築いた体系を、一冊に。深紺
- Liber思想と文芸。自由に書かれた、長く残る言葉。海老茶
- Opus他者の単著。書く力はあるが場のない第一人者の知を、編んで世に出す。銀鼠
- Translatio翻訳。海を越える知を、運ぶ。朽葉色
四つの船は、最初からすべては埋めない。一冊ずつ、自然に育てていく。
One book a year. In no hurry.
年に一冊でいい。急がない。規模を追わない。大衆に迎合しない。
一冊ごとを、時間に削られない「決定版」にする。流行に最適化された本は速く古び、構造に賭けた本は残る。これは、長い仕事だ。
Founded 2026, Tokyo. A house still being built.
2026年、東京で創立。まだ建てている途中の、家です。